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2024年8月11日

コラムVol.13『今後、電気代は上がる? 政府の補助金は? どのくらい割引される?』

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「今年の電気代、高いなあ」
「どうしてこんなに高くなっているの?」
「去年より高い気がする」
そのようにお感じになった方、その感覚は間違いではないかもしれません。
今年はいくつかの要因が重なり、電気代が高騰しているとお問い合わせいただく機会も多くなっています。
今回は、そのようなお客様のご不安や疑問点にお答えしていきつつ、2024年9月請求分(8月使用分)から始まる国の補助制度である「酷暑乗り切り緊急支援」についても解説していきます。
電力価格の高騰をイメージした写真

1.昨年より電気代が高いと感じる理由

(1)「電気・ガス価格激変緩和対策」が2024年6月請求分(5月使用分)までで終了した影響
2024年7月から8月・9月上旬にかけてご請求書がお手元に届く6月・7月使用分の電気代につきましては、現在の電気料金の仕組み上、高くなってしまう方がいらっしゃると予想されます。その中でも8月請求分(7月使用分)は特に高くなる方が多くなってしまいます。
この要因としてまず考えられるのが、国からの補助金である「電気・ガス価格激変緩和対策」が2024年6月請求分(5月使用分)までで終了したことが挙げられます。
厳しい暑さが続くことから補助が再開されますが、現在発表されているのは、2024年9月請求分(8月使用分)から11月請求分(10月使用分)までの3か月間に適用される「酷暑乗り切り緊急支援」です。
つまり、今年の7月から8月・9月上旬にかけてにお客様のもとにご請求書が届く電気代には、補助金による割引がないのです!
電気料金の高騰を説明する図

データ出所:気象庁発表 東京(東京都) 日平均気温の月平均値(℃)

(2)酷暑による電気使用量の増加、需要の逼迫
今年の7月はかなり暑い気候になりました。
気象庁の発表では、「日本の月平均気温は1898年以降で7月として最も高かった」と述べられています。
東京電力グループから発表されている「最大電力実績カレンダー」を見ても、昨年の7月は、使用率が90%を超えた日は10日ほどだったにも関わらず、今年は使用率90%超えの日が28日もあり、昨年よりも暑い夏であることが分かります。
(3)再生可能エネルギー発電促進賦課金の値上がり
現状では、再生可能エネルギーの発電コストは再生可能エネルギー以外のそれと比べると高くなっています。しかし、脱炭素化を進めるために、電気利用者はこの高い発電コストを賄うための費用を等しく負担することとされており、全国一律で同じ単価の再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)が課されています。
2023年度は化石燃料の価格が高騰したことによって再生可能エネルギーとの発電コストの差額が小さくなり、この再エネ賦課金が1.40円/kWhと低く抑えられていました。ですが、2024年度、すなわち2024年4月使用分(5月請求分)からは再エネ賦課金は3.49円/kWhという水準となりました。
参照:https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240319003/20240319003.html
(4)円安・資源の高騰、容量拠出負担金の発生
「円安」や「ロシアのウクライナ侵攻に端を発する資源自体の高騰」により、そもそもエネルギーコストは高騰しています。
そのような中で2024年4月使用分(5月請求分)からは、発電の供給力の確保および電力取引価格の安定化のため小売電気事業者に容量拠出金が課せられることになりました。
これを受けて、新日本エネルギーでは電源コストの算定式に容量拠出金相当額を加算させていただくことといたしました。
詳細は2024年3月1日のお知らせをご覧いただければと存じますが、端的に言ってしまえば、昨年度よりも電気代が上がることとなります。
(5)酷暑だからこその節電の難しさ
今年に限らず近年は、エアコンやクーラーを付けることが必須とも言える猛暑が続いています。
たとえ室内にいても、熱中症のリスクはあり、節電や節約のために、安易にエアコンを切ることは、危険な行為だとも言えるでしょう。
このような流れがあり、新日本エネルギーでは、お客様のご負担の軽減を推し進めるべく、2024年4月使用分(5月請求分)の電気料金から「電源調達調整費単価」と「電源調達費単価」が2023年度と比較して、実質値下げとなる見込みを公表いたしました。
これにより急激な値上がりは回避できているものの、昨年度よりも高い電気料金となっているお客様も多くいらっしゃるのが現実です。

2.「酷暑乗り切り緊急支援」とは

(1)「酷暑乗り切り緊急支援」の概要
2024年8月2日付けでお知らせした通り、2024年8月使用分(9月請求分)から、国による電気代の補助が始まりました。
新日本エネルギーで電力のご契約がある全てのお客様が対象となっており、補助を受けるに当たっての追加の手続きは不要で、自動的に電気代から一定額が割引となります。
2024年8月・9月分の使用分(9月・10月請求分)については4.0円/kWh、2024年10月使用分(11月請求分)については2.5円/kWhのお値引きが入ります(いずれも低圧のお客様の場合)。
(2)どのくらいお得になる?
たとえば今月、2024年8月分のご使用量が150kWhであった場合には600円程度、260kWhであった場合には1,000円を超える割引が入ります。前者はお一人暮らしのお客様による低圧電力のご利用を想定したもの、後者は標準的とされるご家族のお客様による同様のご利用を想定したものです。
資源エネルギー庁のWebサイトでは、どのくらい割引が入るか、シミュレーションを行うことができます。
詳しく知りたい方は試算してみてください。

3.補助金終了による電気代の高騰が起きても、新日本エネルギーが影響を受けづらい理由

(1)世の中には電気代の高騰の影響を受けやすい料金プランがある
電力は株式や為替と似ていて、日々刻々と価格が変動し続けています。電力にはJEPXと呼ばれる電力の卸取引所があります。この取引所の代表的な市場はスポット市場であり、直近の電力需要を賄うための取引が中心になっています。
世の中にはいわゆる「市場連動型プラン」として、JEPXでのスポット取引価格にほぼ完全に連動する料金制度を採用している電力会社も多くあります。
(2)新日本エネルギーは固定価格での電力もあわせて調達
しかし、新日本エネルギーでは、固定的な価格での電力の安定的な調達に努めています。
同じJEPXという卸取引所でもスポット市場とは異なる「ベースロード市場」という年間固定価格での購入が可能な市場での取引を行っています。さらに電力の取引仲介会社を通じて相対契約で中長期に固定された価格での電力も調達しています。
(3)需給逼迫によるスポット価格上昇の影響が限定的な新日本エネルギーの料金プラン
電力のスポット市場での取引価格は、電力需給の影響を強く受けます。
実際、気温が比較的安定していた2024年5月のスポット価格は9.62円/kWh、少し気温が高い時期もあった6月は10.92円/kWhでしたが、史上最高の気温を記録した7月は14.15円/kWhへと上昇しました。固定価格での電力調達を行うことのメリットとして、発電所の停止などによる供給量の低下や気温の変化による需要量の増加による電力価格の高騰の影響を受けづらいことが挙げられます。(※)
新日本エネルギーでも「市場調整費」という制度を設けており、JEPXのスポット価格の影響を料金に反映させていただく仕組みは設けさせていただいております。
しかし、一定の価格までは市場調整費は発生しませんし、その価格を超えても「市場調達割合係数」を掛ける算式になっていますので、スポット価格との連動性は限定されています。そのため、補助金の有無に関わらず、様々な事象による電力スポット価格の高騰の影響が限定された料金になっています。
(※)実際には固定電源での調達を行っていない一部エリア(北海道・東北・北陸・四国)でも、前年(2023年1月~12月)の各エリアプライスを当社の需要量で加重平均した価格を用いることで擬似的に価格を固定しており、一定の価格を超えない限りは市場調整費が発生しない仕組みを実現しています。

4.おわりに:節電を意識しながら暑い夏を乗り越えよう

8月請求分(7月使用分)の電気代に驚かれた方も、この記事によってその要因へのご理解を深めていただけたのではないでしょうか。
これからは国の「酷暑乗り切り緊急支援」による補助も入りますし、新日本エネルギーの料金プランは電力需給逼迫によるスポット価格高騰の影響が限定的になっています。
可能な限り節電を意識しながら、暑い夏を一緒に乗り切りましょう。

【ワンポイント】電気料金の使用月・請求月

このコラムでは4月使用分(5月請求分)といった表現をたくさん使用しましたが、実は電気料金の使用月・請求月はちょっと複雑であることをご存じでしょうか?

電気料金は使用量に基づいて決まるため、使用量を確認するための「検針」が行われます。電気はそれこそありとあらゆる場所で使われているので、多くの電気メーターの検針を行うためには、検針を行う日である「検針日」を少しずつずらして、計画的に検針を行っていく必要がありました。そのため電気料金はその「検針日」を基準にして、そこから遡るようにして期間が決められています。

新日本エネルギーでは、検針日が属する月を請求月としていますが、その請求に対応する電気の使用期間は、「その年の前月の検針日から当月の検針日の前日までの期間」として定められるのです。

ちょっと例を使って説明してみましょう。

毎月10日が検針日になっていたとすると、5月10日が検針日の場合、つまり「5月請求分」ということになる訳ですが、これに対応する電気の使用期間は、4月10日から5月9日までの1か月間になり、これを「4月使用分」と呼ぶのです。4月使用分には5月1日から5月9日までの使用量も含まれることになります。

もちろん5月1日が検針日の場合が「5月請求分」では最も早い期間になる訳ですが、4月1日から4月30日までの間に使用した電気が「4月使用分」となります。これは分かりやすいですよね。

しかし、たまたま検針日が30日になっている方にとっては、5月30日が検針日の「5月請求分」の電気料金は、4月30日から5月29日までの使用量が「4月使用分」とされるのですが、ほとんどの期間が5月ですよね。

2024年の7月は観測史上で最も気温が高かったそうだということは本文にも書きました。その観測期間はもちろん7月1日から31日までだった訳ですが、この期間がピッタリ「7月使用分」となってそのまま「8月請求分」となる方は、およそ30分の1しかおられない計算になります。実際には6月から7月の分を7月に検針を受けて7月請求分(6月使用分)、7月から8月の分を8月に検針を受けて8月請求分(7月使用分)という風に分かれる方がほとんどです。

補助金の対象とならない「7月使用分」(8月請求分)については、最後は7月31日から8月30日までの期間の電気使用量の検針を8月31日に受ける方まで、まだまだ20日ほど続くことになるのです。

新日本エネルギー メディアチーム