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2025年1月22日

コラムvol.23『日本と比べてどう?世界各国の電気料金事情』

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ここ数年、コロナ禍後の経済や物流の回復、戦争など世界情勢との関連により世界各国で電気料金の値上がりが話題になることが多くなりました。そこで今回のコラムでは、家庭用の電気料金について日本と欧米各国を比較してみました。
なお、記事の中で扱った電力の単位kWh(キロワット時)は、1キロワットの電力を1時間使用した電力を指し、各国において1kWhで消費した際の電力料金を円換算した金額で比較しています。

■再生可能エネルギーの普及に力を入れるデンマーク

まずはデンマーク。電気料金は後述の日本の約2倍、驚きの約70円/kWhです。
デンマークで電気料金が高いのは、環境税など公租公課の割合が大きいことが主な理由として挙げられます。またデンマークでは風力発電を始めとした再生可能エネルギーの普及に力を注いでおり、再生可能エネルギーによって発電された電力を国が買い取る制度があります。このため電力の買取にコストが発生しており、風力発電設備の建設費と合わせて電気料金を押し上げていると考えられます。

再生可能エネルギー

一方でデンマークでは産業用の電力は約25円/ kWhと、家庭用よりも大幅に低くなっています。これは前述の公租公課の負担が家庭用の電力よりも大幅に低くなっていることが原因です。

■イギリスでは天然ガスの値上がりが打撃に

イギリスの電気料金は約50円/kWhで、天然ガス価格の高騰の影響を受けて上昇しています。
イギリスでは2019年より家庭用電気料金の上限を規制する制度が設けられていたものの、卸電力価格を基に上限価格が決まる仕組みでした。このため2022年に戦争の影響により卸電力価格が高騰した際には家庭用電気料金の上限価格も上昇してしまいました。これでは需要家(※)を守る役割を果たせないということで、困窮世帯向けの支援策が実施されました。
※需要家(じゅようか)…電気やガス、水道などの供給を受ける対象(消費者)のこと

■エネルギーの半分を再生可能エネルギーでまかなっているドイツ

ドイツの電気料金は約45円/kWhです。ドイツは脱原発をエネルギー転換政策の目標に掲げ、実際に国内の原子力発電所の稼働を終了しました。ドイツでは、デンマークと同じように再生可能エネルギーの普及に力を入れており、既に発電のほぼ半分を再生可能エネルギーでまかなっています。デンマークと同様に、再生可能エネルギーによる発電を重視していることが、高コストにつながっています。

■日本の電気料金は為替の影響を受けやすい

日本の家庭用電気料金は、電力会社のプランによって異なるものの、30~35円/kWh前後です。ご存じの通り、日本では石油や天然ガスなどの化石燃料のほとんどを輸入に頼っています。このため、化石燃料の価格高騰や為替相場の影響を受けやすいのが特徴です。

新日本エネルギーでは・・・
こうした価格高騰や為替の影響のリスク低減を図るため、電力の取引仲介会社を通じて相対契約で中長期に固定された価格での電力を調達する等(一部エリアを除きます)、電源調達方法の割合を分散化させております。
そのため、万が一JEPX(日本卸電力取引所)でスポット取引市場価格が高騰した場合でも、お客様のご負担額に大きく影響させない仕組みとなっているため、安心して電気をご利用いただけます。

また、日本と前述のヨーロッパ諸国で事情が大きく異なる点があります。ヨーロッパ諸国では送電線が国境を越えて敷かれており、電力の売買が可能です。例えば島国であるイギリスでさえ、海底を経由してオランダとの間に大規模な送電線を設置しています。これに対して、日本では必要な電力の全てを自国内で発電しなければなりません。

自国内発電

■資源の超大国アメリカは電気料金が安い

アメリカといえば物価高のイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、電気料金については州により10~30円/kWhと大きく異なるものの、いずれも主要先進国の中では安く抑えられています。実はアメリカは石油・天然ガスともに産出量は世界第1位。つまり発電に必要な化石燃料を自国内でまかなえるという大きなアドバンテージがあります。産油国といえば中東諸国のイメージがありますが、アメリカはそれを上回る燃料資源の超大国だといえるでしょう。

■各国ごとの事情と日本政府の支援政策

各国の電力事情を整理してみると、次のようになります。

・コスト高を承知で再生可能エネルギーを選択:デンマーク・ドイツ
・国境を越えて電気の売買ができる仕組みづくり:ヨーロッパ諸国
・石油・天然ガスを自国でまかなうことが可能:アメリカ

このように電気料金を調べてみることで各国の電力政策や諸事情が垣間見えてきます。
前述の通り、日本は国内でエネルギー資源を産出することも、送電線により国外から電気の供給を受けることもできません。アメリカとも欧州とも異なる事情がある中で、日本政府は2024年には「酷暑乗り切り緊急支援」を実施する等、電気料金の高騰による家庭の負担増を軽減するための施策を行っています。

■おわりに

各国の事情を知ることで、電気料金を巡る日々のニュースも見方が変わるのではないでしょうか?
特に戦争の影響による石油や天然ガスの価格高騰は、電気料金に変動をもたらす大きな要因となっています。まずは一日も早く、世界が平和になることを願うばかりです。

世界平和

※掲載の電気料金および各国情勢は、2024年12月の記事作成時に入手したデータです。最新の電気料金は、電力会社などにご確認いただくようお願い申し上げます。
ライフハックライター 柴山 賢二(中小企業診断士)