COLUMN
コラム

2024年10月22日

コラムVol.18『再エネ賦課金って何ですか? なぜ電気料金に上乗せされるの?』

  • Line
  • Twitter
  • Facebook
⏳ このコラム記事は約7分で読めます。
(1分あたり500文字のペースで計算)
皆さんは「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(再エネ賦課金)という言葉を聞いたことがありますか? これはクリーンで持続可能なエネルギーを支えるために私たちが毎月支払っている未来への小さな投資です。太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱など、再生可能エネルギーの普及に必要な資金を提供するために導入された再エネ賦課金。その背景や仕組みについて一緒に見ていきましょう。

■再エネ賦課金が生まれた背景

1980年代から気候変動の影響が顕在化し、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において、先進国に温室効果ガスの削減義務を課す「京都議定書」が採択されました。これにより二酸化炭素など温室効果ガスを排出せず、自然の力を利用して発電する再生可能エネルギーの取り組みが世界各国で進められるようになりました。特に日本では環境面に加え、化石燃料や原子力といった輸入依存型のエネルギーに関する安全保障の懸念から再生可能エネルギーへの期待が高まりました。

2011年の東日本大震災は、日本にとって再生可能エネルギーの重要性を再認識させる大きな契機となりました。そして2012年に「再生可能エネルギー電気の利用促進に関する特別措置法(再エネ特措法)」が施行され、再エネ賦課金の根拠となる固定価格買取制度(FIT制度)が導入されました。

再生可能エネルギー

FITとはFeed-in Tariffを略したもので、政府が予め定めた固定価格で電力会社に再生可能エネルギーを買い取ることを義務付ける制度のことです。この制度により、再生可能エネルギーの普及が急速に進むことになりました。2022年からは新しくFIP制度もスタートしています。こちらはFeed-in Premiumを略したものであり、売電価格を固定するのではなく、市場価格に一定の補助額(プレミアム)を上乗せすることによって、需要と供給に応じて再生可能エネルギーの供給が促進されるようにする仕組みです。

■再エネ賦課金とは?

冒頭でも説明した再エネ賦課金とは、簡単に言うと「再生可能エネルギーの導入費用を電気料金に上乗せして、国民全体で広く薄く負担する」制度です。

家庭用の太陽光発電を例に取りましょう。
日中、太陽光で発電した電力が家庭で使用され、余った電力は電力会社に売電されます。この売電の買取価格が一定期間(家庭用太陽光発電の場合は10年)固定されており、その資金を賦課金として支払うことで全国民私たち生活者が広く支えています。再エネ賦課金のおかげで、発電設備を設置した家庭や事業者が安定した収益を得られるため、再生可能エネルギーの普及が進んでいます。皆さんも住宅地や郊外、公共施設などで太陽光パネルを見かける機会が増えてきたのではないでしょうか。これは環境意識の高まりやエネルギーコスト削減を目指す人々が増えていることの表れでもあります。
固定価格買取制度の仕組み

固定価格買取制度の仕組み

[参考情報]
資源エネルギー庁 | FIT・FIP制度(2024年10月18日閲覧)

■再エネ賦課金を毎月いくら払っていますか?

皆さんは、毎月いくらの再エネ賦課金を支払っているかご存知ですか?
それは電力会社から送られてくる「ご使用量のお知らせ」で簡単に確認することができます。基本料金や電力量料金に加え、再エネ賦課金が記載されています。この金額は「使用した電力量(kWh)×賦課金単価(円/kWh)」で算定されます。例えば月に250kWhの電力を使用した場合、再エネ賦課金の単価(3.49円/kWh)で計算すると以下のようになります。

250kWh/月 × 3.49円/kWh = 872.5円/月

これが毎月の負担額であり年間にすると約1万円を再エネ賦課金として支払っていることになります。この負担は地域や電力会社に関わらず全国一律であり、電力の利用者であれば一般のご家庭だけではなく事業者も同じ単価で負担しています。

■再エネ賦課金の額はどうやって決まるの?

再エネ賦課金の単価はどのように決まるのでしょうか?
この単価は再エネ特措法で定められた方法に則って再生可能エネルギーの導入量や電力市場の状況を反映し、毎年度経済産業大臣が設定して公表します。

下記は制度の開始から現在に至る単価の推移を示したものです。
制度発足当時、0.22円であった単価は再生可能エネルギーの導入と共に上昇し続け現在は3.49円となっています。2023年に一時値下がりしたことがありましたがその理由は電気代の高騰でした。一般の電気代が高騰したことによって再生可能エネルギー由来の高価な電気を買うための「差額」が小さくなったため、再エネ賦課金は安くなりました。

再エネ賦課金単価推移図

■今後の見通しはどうなるの?

この再エネ賦課金は今後どうなっていくのでしょうか?
今後の見通しに関して明確に示されたものはありませんが今後も当面その負担は増えていくと見られています。
一般財団法人電力中央研究所の試算では2030年には再エネ賦課金の単価が「3.5円から4.1円」に上昇すると予測されています。再生可能エネルギーが普及すればその分買取量は増えます。しかし固定の単価も定期的に低減する方向で見直され、かつ買取期間が終了する発電設備も徐々に出てくることからずっと増え続けるということはなく、環境省の試算によれば2030年以降再エネ賦課金は徐々に下がっていく見込みです。

■おわりに

2030年以降は徐々に下がっていくと見られる再エネ賦課金の単価ですが、当面は値上がりが続きそうで電気代の負担はますます重くなってしまいそうです。こうした負担を少しでも軽減するためには私たちはどうすればよいのでしょうか?
最も効果的な方法の一つは「省エネ」です。例えば、無駄な照明をこまめに消したりエアコンの設定温度を見直したりするなど日常生活の中でできる省エネに取り組むことが重要です。また、エネルギー効率の高い家電製品や断熱性の高い建材を利用することで電力消費を抑えることができます。これらにより再エネ賦課金がそもそも目的としていた気候変動対策にも貢献することができます。

また、電気料金や使用量に日頃から注意を払い世界や我が国のエネルギー政策に対して関心を持つことも大切です。エネルギー問題は私たちそして子孫の未来を左右する重要な課題です。再生可能エネルギーの普及は気候変動対策として求められる世界的な取り組みであり私たち一人ひとりが直接・間接的に関わる問題です。再エネ賦課金を負担することを通じて私たちは持続可能な社会の実現に貢献しています。そのように捉え方を変えること、「リフレーミング」を経ることで再エネ賦課金の負担をマイナスと考えるのではなくより良い未来を次世代に残すためにライフスタイルを考えるきっかけとしたいものです。

明るい未来

ライフハックライター 増田 利弘(中小企業診断士)