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2020年12月8日

コラムvol.8『ピックアップ!再エネ発電』

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5種類の再生可能エネルギーを前回取り上げましたが、その中でも、新たに法が改正され、更なる普及を目指してるものもあります。そこで、2つの発電方法をピックアップして、紹介していきます。
(前回の記事はこちら vol7『再生可能エネルギー』)

今回紹介する発電方法は、この先の再エネの導入促進に一役買うかもしれません。
環境問題や、経済状況なども絡んでくる発電事業。社会の変化が起こるタイミングで発電に関するニュースをチェックしておきましょう。
ピックアップ!再エネ発電
■洋上風力発電
頭の中で、風力発電をイメージしてみてください。大きな風車が、周りに何も無いような広い土地で回っている。その様なイメージではないでしょうか。
この方式は、文字通り「陸上風力発電」と呼ばれていますが、都市部をまかなうような大規模な発電を行うには、巨大な風車を一定間隔で並べて建設する必要があるため、候補地やスペースが限られています。
日本は周りが海に囲まれている島国です。陸上よりも海上の方が、圧倒的に広いです。そこで、海に風車を作れば、陸上だけで発電する場合と比べ、より多くの風車を設置でき、今よりもさらに電気を発電できる!理にかなっていますよね?
これが、洋上風力発電です。
(ちなみに、日本の国土面積に対し、領海・排他的経済水域を合わせた海洋面積は約11.8倍の広さだそうです。【 国土面積:約38万平方キロメートル、海洋面積: 約447万平方キロメートル 】)
洋上風力発電
発電の場所が陸か海かで、風力発電の仕組みが変わることはありません。陸上との違いの一つは、土地の制約が少ない為、より大きな風車を設置できます。単純に風車が大きい程、発電効率は上がります。また、海上では陸上よりも風が安定しており、騒音の問題など周辺環境や人との問題をあまり気にする事がないので、陸上よりも安定した発電量が見込めます。
ヨーロッパでは積極的に導入されていて、直近5年で3倍にも増えています。
では、日本での実態はどうなっているのでしょう。
【日本での洋上風力発電】
日本の洋上風力発電の現状はというと、ヨーロッパと比べて、まだまだ導入が進んでいません。しかし、導入拡大に向け、本格的に準備が進んでいます。
これまで導入拡大に向けて、課題がいくつかありました。
まず、その海域を事業者が発電のために独占して使ってもよいという「占用(せんよう)」のルールが明確では無かった事です。クリーンなエネルギーのためとはいえ、業者が勝手に風車を建設するなんてもってのほかですよね? どうすれば建設予定の海域を利用できるのか、審査・申請の基準が不透明でした。また、海では漁業が行われていたり、船便による輸送が行われています。そこに施設を設けると、先に海域を利用している人達や業者が、回り込んで行き来しなければいけないため、利害関係を公正公平に整理しなくてはなりません。そして、当然ながら自然環境への影響も考慮しなければなりません。波や潮の流れ、海底の形を変えてしまう可能性があるため、生態系へダメージを与えてしまう懸念もあるからです。
そんな課題を解消し、新規事業者の参入や利用拡大を目指す為に、洋上風力発電に関する法律が2019年4月に制定されました。
その法律が、再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)です。
どの様な内容なのかというと、
まず、政府が促進区域を選定します。エネルギーに関することは、経済産業省、資源エネルギー庁が主な担当となりますが、この法律に関しては、ここに国土交通省と農林水産省が加わります。さらに、地方自治体や各専門家、漁業関係者や地元の住民までも交えて、風力は十分なものか、持続時間、 風車を設置する海底の地質はどうか、 経済的な価値は生まれるのか、周囲への悪影響はあるのか、という総合的に効率の良い発電を行える場所を探します。
そして、発電を行う事業者は公募によって決められ、最大30年間海域の占有が認められます。事業者は発電と供給の計画を作成し、政府へ提出するわけなのですが、促進区域を選定する際に話し合われた内容を受けているのかという点をはじめ、建設から撤去まできちんと行うことが出来るのか、継続した発電と供給を行えるか、そして電気を供給する価格が安いのかが審査のポイントになります。特に、供給価格が安いという点は重要視され、事業者間の競争を促進し、コストを抑える狙いがあります。
これまでの課題を法整備という方法で解決し、安定して発電することのできる状況が整ってきました。前述したとおり、日本では洋上風力を導入するチャンスが多く残っています。この先の再エネの担い手、脱炭素社会に向け重要な存在だという認識だからこそ、今回の法整備につながっていったのでしょう。


■バイオマス発電
バイオマス発電は、他の紹介した再エネと比べ、はっきりとしたイメージが浮かばないと思います。火を使う、風を使う、温める、などのアクションが、”バイオマス”という単語からは想像しづらいですよね。
そもそも、生物資源を使って発電するバイオマス発電が、再エネに含まれている理由には、カーボンニュートラルという考えが前提にあり、発電時に二酸化炭素を排出しないということで再エネに含まれております。また、廃棄されるものを燃料として利用しているので、廃棄されるエネルギーを、発電に用いていることとなり、エネルギーを無駄なく活用することができます。
二酸化炭素を増加させることもなく、廃棄物をなどのエネルギーの再利用している点など、環境へ及ぼす影響が少ないです。
また、バイオマス発電所をどのような場所に建てるのか。シンプルに考えると、ゴミを使うなら、ゴミ処置場の近く。木材を使うなら、木材事業者が集まる地域に作れば、燃料の調達コストや、輸送コストも抑えることができます。もちろん、発電した電気を送らなくてはいけないのでそんな単純な話では無いですが、ある程度地理的な条件にも自由度があります。
太陽光や、風力などと異なる点は、燃料さえあれば安定して発電ができることです。また、地理的な条件にも左右されにくいです。そこで、再エネの中のベース電源としても期待されています。
廃棄物や木材などを利用する点では電気の地産地消が可能です。生産と消費をそれぞれの地域で行えば、
側面からも、バイオマス発電は期待されています。
【カーボンニュートラル】
カーボンニュートラルとは、簡単に言うと、なにかを生み出す時に発生する二酸化炭素は、それまでに吸収された二酸化炭素と同じ量である。つまり、大気中の二酸化炭素の量は変わらない。という考え方です。
カーボンニュートラル
バイオマス発電では、燃料として利用される生物資源。これらは燃料となるまで二酸化炭素を吸収していました。
発電時にそれらの燃料を燃やすことで、二酸化炭素が排出されます。この吸収していた二酸化炭素と、排出される二酸化炭素が同量ということです。
しかし、カーボンニュートラルが行われているからといって、どんどん温室効果ガスが削減されていくわけではありません。その為、カーボンニュートラルに加え、様々な技術が導入され、省エネを目指すことになります。


■おわり
vol8終わりに
10月26日に、2050年カーボンニュートラル宣言が表明されました。
この宣言により、脱炭素社会に向け、再エネの導入拡大はますます進んでいくでしょう。石炭に再エネが取って代わる経過段階で、また政策の施行や制度の導入などが起こる事が十分考えられます。
環境問題や、経済などスケールの大きな話が絡んでいますが、決して他人事ではありません。
電気代に影響を与えることもでるでしょうし、そもそも環境問題や経済の動きは、生活に大きな影響を与えます。電気もそういった話と切り離さずに考えることで、変化の流れを汲みやすくなるはずです。