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2024年9月13日

コラムVol.16『電力が不足するかも? 電力需給ひっ迫と私たちにできること』

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■電力需給ひっ迫って何?

毎日の生活に欠かせない電力。
でも、もし電力が足りなくなったら…そんな状況を想像したことはありますか。
電力ひっ迫とは、私たちが使う電力の量(需要量)が、電力会社が供給できる電力の量(供給量)を超えてしまうかもしれないぎりぎりの状態のことです。
「それなら、いつも多めに電力を作っておけば防げるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、電力は貯めておくことが難しく、電力を安定して供給するためには需要量と供給量は常に合わせる必要があるのです。このバランスが崩れると電力の供給が不安定になり、最悪の場合、ブラックアウトと呼ばれる大規模な停電につながる可能性があります。

電力需給がバランスしなくなるイメージ

そのため、政府は発電事業者や送配電事業者など、電力の安定供給を担う事業者と連携し、電力需給がひっ迫しないように、またひっ迫しても安定して電力を供給できるように対策を進めています。

■電力需給ひっ迫を防ぐために

電力需給は、従来、北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄の10エリア(区域)単位で管理されてきましたがと、電力システム改革によって広域化が図られ、現在では大きなまとまりである広域ブロック単位で管理されています。
広域ブロック単位に分けられているのは、電力が不足するエリアへ他のエリアから電力を届けるための整備が進められており、複数のエリアが一体となって電力の取引や運用を行っているからです。
政府は、発電・供給できる最大量が想定される需要量に対してどのくらい余裕があるかを「予備率」という指標で管理しています。急な暑さ・寒さによる需要増や発電設備のトラブルなどによる供給低下が起こっても、発電・供給できる量に余裕があればすぐに対応できるからです。
広域ブロック毎の予備率(広域予備率)が安定供給の目安となる予備率を下回ることが予想された場合、政府は電力需給がひっ迫するとして対応を進めるようにしています。状況に応じて、休止発電所の稼働や自家用発電設備を持つ事業者に発電機の使用の要請、ひっ迫していないエリアからひっ迫しているエリアへの電力供給など、さまざまな対策が用意されているのです。
しかし、それだけの対策を踏まえても、広域予備率が5%を下回る場合、私たち電力消費者を含めて節電の協力が求められることになります。

[参考情報]
経済産業省 資源エネルギー庁「2024年度以降の電力需給運用」(2024年9月11日閲覧)

■電力需給ひっ迫警報と注意報

対策を踏まえても電力需給がひっ迫する見通しとなった場合、広域予備率によって段階的にアラートが出されることになっています。

注意報・警報のタイムライン

【需給ひっ迫準備情報】
広域予備率が5%を下回る見通しとなった日の2日前18時を目処に東京電力や関西電力など一般送配電事業者から発信される最初のアラートです。電力需給ひっ迫の可能性を早めに伝え、企業や各家庭でも事前に対策する準備時間の確保を意図しています。
【需給ひっ迫警報】
広域予備率が3%を下回る見通しとなった場合、前日16時を目処に資源エネルギー庁から発令される重要なアラートです。状況の厳しさに応じて節電要請が行われることになります。この際、計画停電等を行う可能性がある場合、一般送配電事業者から実施の可能性が公表される予定です。
【需給ひっ迫注意報】
警報発令の基準には届かないものの、広域予備率が5~3%の見通しとなった場合、前日16時を目処に資源エネルギー庁から発令される注意喚起のアラートです。生活や経済活動に支障のない範囲で最大限の節電協力を促すものです。予備率の見通しが変わり、需給ひっ迫のおそれが解消されると、注意報も解除されます。
警報発令後、節電要請等を行っても、広域予備率が1%を下回る見通しの場合、対象エリアでは計画停電の実施が検討されます。計画停電を実施する場合は、電力が不足するエリアにだけ負担が集中しないよう、複数エリアで計画停電を実施し負担を分担することになります。

■電力需給ひっ迫警報と注意報

電力需給は、あらかじめ作成した発電計画をベースに、その時々で変動する需給状況に合わせて発電量を変えることで調整されています。そのため、電力需給のバランスを大きく崩すようなことが起こると電力需給のひっ迫につながるのです。

バランスが崩れるイメージの写真

【1.発電所トラブルの影響】
地震や台風、大雨による浸水などで発電所が停止したり、設備トラブルなどで稼働が停止したりすると、電力の供給に影響が出ることがあります。
【2.季節や天候の影響】
年々厳しさを増す猛暑や厳冬によるエアコンの使用量増加はもちろん、季節外れの暑さや寒さも発電計画を超える急な電力需要の増加を招くことがあります。
【3.再生可能エネルギーの影響】
コラムVol.7『再生可能エネルギー』でも触れたように、太陽光発電や風力発電など、近年利用が増えている再生可能エネルギーは、発電量が天候などの自然状況の影響を受けやすいものです。そのため急な電力需要の増加への対応には向いておらず、また、気象条件によっては再生可能エネルギーの発電量が想定より減少することもあります。

■電力需給ひっ迫を防ぐために私たちにできること

電力需給ひっ迫を防ぐために私たち一人ひとりにできることは何でしょうか。
【こまめな節電】
使っていない家電のプラグを抜いて待機電力を減らすことや、使っていない部屋の照明のこまめな消灯、冷暖房設備の設定温度を無理のない範囲で調整するなど、小さな積み重ねで消費電力量を減らすことができます。
【ピークシフトの意識】
一般的に電力使用が集中するといわれる13時~16時(夏季)などの時間帯を避けて家電を使うことや、企業の電力使用が少ない夜間電力を活用することで、電力需要の集中を緩和することができます。

■おわりに

電力需給ひっ迫は、日常生活や企業活動に大きな影響を与える可能性があるものです。政府や電力会社の対策だけではなく、私たち一人ひとりの小さな行動の積み重ねがひっ迫回避につながります。節電やピークシフトなど、日々の生活の中でできることから始めて、電力の安定供給を支えてみませんか。
ライフハックライター 泉 香奈