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2021年2月1日

コラムvol.10『市場連動型プラン』

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■電気市場価格の高騰
市場連動型

2021年1月29日に経済産業省からこのようなニュースリリースがありました。
参考:「市場連動型」の電気料金プランを契約されている消費者の皆様へー電力のスポット市場価格の高騰に伴う注意喚起についてー *1
(外部サイト)


この内容は、昨年末からもニュースやSNSで話題となっている、
電力市場価格の高騰を受けたものです。「電気代が急に上がるの?」「新日本エネルギーは市場連動型なの?」といったお問い合わせも多くございますので、改めてこちらのコラムでもご紹介いたします。


■新日本エネルギーの料金について
新日本エネルギーの料金について
まず、新日本エネルギーのプランは「市場連動型ではございません」。
料金の中身(内訳)は、
・電気料金単価
・燃料調整費
・再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)
となり、使用した電気の量に応じて、ご請求の金額が確定します。料金単価は、電気使用量に応じて段階的に適用されますが、各段階の単価は変動いたしません。

(例) 東京エリア おうち時間応援プラン電灯B(東京電力 従量電灯Bに相当)
0~120kWh (第1段階) 1kWhあたり 19.88円
120kWh~300kWhまで(第2段階) 1kWhあたり 24.04円
300kWhを超えた分 (第3段階) 1kWhあたり 26.12円

400kWhを使った場合の概算は、
・第1段階 120kWh×19.88円 = 2385.6円
・第2段階 (300-120)kWh×24.04円 = 4,327.2 円
・第3段階 (400-300)kWh×26.12円 = 2,612 円
ここに、アンペア契約の基本料金や燃料調整費、再エネ賦課金などが加算され、最終的な請求金額となります。


また、燃料調整費は各地方電力が定め、再エネ賦課金は経済産業省 資源エネルギー庁が定めていますが、翌月分や半年分の価格が事前に公表されるため、誰でも確認することが出来ます。
参考:燃料費調整のお知らせ(2021年3月分)*2
参考:FIT制度における2020年度の買取価格・賦課金単価等を決定しました(2020年3月23日)*3
(外部サイト)


当社の料金設定と同じように、「事前に価格を決定して適用している」新電力の会社も多くあります。「どれだけ使っても1kWhあたり○○円」「○○kWhまで使い放題」といった定額制の料金プランもありますが、その場合でも、発生するコストを予想しながら事前に固定の料金を決定しています。そして、事前に決まっているからこそ、利用者は「今月に支払う電気料金を自分であらかじめ予想できる」ことが可能になります。これも料金固定のプランの大きなメリットの一つです。スマートメーターにより、毎日どのくらいの電気を使ったのか?を確認できるようになっておりますので、きっとご家庭の節電に役立ちます。


■市場連動型とは?
今回のように電気の市場価格が変動した事態になったとしても、段階制を料金プランに採用している場合には、事前の単価を急に変えて請求するということはありません。今まで通りの計算による料金のご請求となります。(電力会社の利用規約によって一概には言えませんので、ご家庭の契約内容は改めてご確認ください。)
ですが、裏を返せば「余剰に発生するコストを企業側で負担しなければならない」ということが言えます。この問題に対する答えの一つとして、市場連動型という料金設定が考えられました。


では、市場連動型の料金計算はどうなっているでしょうか?
大きな特徴としては「発生したコストをその分野別に顧客へ請求する」ところにあります。大まかに分けると次の3つです。


【 1. 電気を流すための設備費用 】
電線や電柱といった送電の設備は各地方電力や関連会社が管理していますので、新電力各社はその使用料を支払っています。これを「託送(たくそう)料金」と言います。決定された価格は、各地方電力会社のウェブサイトで公表しています。


【 2. 流す電気を仕入れる(買う)費用 】
大規模な発電施設を持つ場合以外は、新電力会社は電力市場から電気を仕入れて顧客へと供給しています。今回問題となったのは、この部分です。仕入れ費用を顧客へ請求する契約内容だったために、突然の値上げにどう対応するのか?という各社の動向に注目が集まりました。


【 3. 人件費などの企業運営の費用 】
カスタマーセンターなど、その企業が新電力サービスを続けていくための費用です。


それぞれの部門毎に単価を設けて使用量を掛け算している場合や、燃料調整費も考慮した独自の計算に基づいて請求金額を決定している場合もありますが、毎月または毎日変動しますので、従来の料金設定とは大きく異なる特徴を持つことは共通しています。今回は仕入れ価格が高くなってしまったことが注目されていますが、反対に仕入れ価格や託送料金が安くなればなるほど、その分電気料金もぐっと安くなるというメリットが市場連動型にはあります。リアルタイムで利用者の料金へと還元出来るのです。


■影響を与えた「仕入れ価格」
今回の一件で、「JEPX」というキーワードを初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか?これは、一般社団法人 日本卸電力取引所(Japan Electric Power Exchange,)の略称のことです。
参考:JEPX 公式ホームページ*4 (外部サイト)


JEPXでは「スポット市場」といって、30分ごとに需要と供給のバランスをみて、1kWhあたりの仕入れ価格が決定され、各電力会社がその価格で電気を購入します。

ここで、実際の価格をみてみましょう。
このグラフ*4 は、2021年1月12日の24時間の推移です。
2021年1月12日グラフ

これと、2020年1月12日の24時間を比べてみましょう。*4
2020年1月12日グラフ

画像の左側の数値は、1kWhあたり何円かという指標です。
2020年は5円~10円の間を推移したのに対し、2021年は10円~200円以上を推移しています。振れ幅が大きいことは、今までも見受けられることでしたが、100~200円台にまでのぼるのは異常な事態です。


この事態に対して、経済産業省は2021年1月15日に上限の価格を200円とする特別措置を認可しましたが、それでも200円はとても高額な価格です。
2021年1月19日

上記は、2021年1月19日のグラフです。*4
200円を上限に推移しています。この特別措置は「インバランス料金」というものの上限を200円にするよう実施されました。

参考:卸電力市場価格の高騰に対する対応としてインバランス料金等単価の上限を200円/kWhとする特例認可を行います *5


前述の通り、市場連動型の場合には仕入れ価格が電気料金に反映されるプランですので、今まで5円や7円だったのに10倍以上の値段が反映されるのでは!?という不安の声が多くあがったというわけです。JEPXのウェブサイトでは、過去の日付や本日の推移も確認することが出来ますので、ぜひ一度ご覧ください。


■原因は何だったのか?
今回の価格高騰の原因は一体どこにあったのでしょうか?
まず、気温の急激な低下によって暖房で使用するための電気需要が急速に増加したこと。また、発電比率の大部分を火力発電に依存している今の現状に対して、使用する燃料の液化天然ガス(LNG)が不足し、その結果供給の発電量が不足するという、需要と供給の2つの原因が重なり、今回の仕入れ価格高騰に繋がったと見られています。


■おわりに
vol10_おわりに
2021年のはじめから、思わぬ形で新電力のデメリット・リスクの部分に注目が集まりましたが、電力業界では今後のサービス提供に向けて、様々な防止策を取る動きが活発になっています。例えば、JEPXからの電気調達に依存しないように出来ないか?、価格の高騰をある程度予想出来るように、素早い情報収集が出来ないか?など、今までスポットが当たらなかった部分の改善が急速に進んでいくことになるでしょう。


【出典】
*1 経済産業省「ニュースリリース」(外部サイト)
URL:https://www.meti.go.jp/press/2020/01/20210129003/20210129003.html

*2 東京電力 燃料費調整のお知らせ(2021年3月分) (外部サイト)
URL:https://www.tepco.co.jp/ep/private/fuelcost2/new/index-j.html

*3 経済産業省「ニュースリリースアーカイブ 2019年度3月一覧」(外部サイト)
URL:https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200323005/20200323005.html

*4 JEPX 公式ホームページ (外部サイト)
URL:http://www.jepx.org/

*5 経済産業省「ニュースリリースアーカイブ 2021年度1月一覧」(外部サイト)
URL:https://www.meti.go.jp/press/2020/01/20210115007/20210115007.html