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2024年12月13日

コラムvol.21『「容量市場」の基礎知識~電気で大切なのは「今」安いことだけじゃない!?』

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日本国内では2016年に電力の小売りが全面自由化され、消費者は電力会社や料金プランを自由に選択できるようになりました(一部条件を除く) 。
さて、皆さんは電気料金がどのように決まっているのかご存じでしょうか? 実は電気料金の決定には、使用した電気の量(kWh)以外にも多くの要素が関係しています。今回はそういった要素の一つである「容量市場」について解説いたします。

■電気で大切なのはいつでも安心して使えること

皆さんは毎月の電気料金が高いのと安いのと、どちらが嬉しいでしょうか? もちろん安い方ですよね。ですが「とにかく安ければ良い」とは言えません。いくら安くても度々停電するようでは困りものです。一般家庭で停電が困るのはもちろんですが、例えば医療機関で設備が安定して稼働できなければ人命に関わる事態となってしまいます。電力が安定して使えないことは社会不安につながるといっても過言ではありません。

公平に話し合う人

このため電力自由化によって電力会社がコストダウンに熱心になるあまり、設備の更新や維持管理を後回しにしてしまわないような仕組みづくりが必要になってきます。また、次の項目で説明するように電力会社には発電設備を自ら所有する企業とそうでない企業があるため、両者の間で負担を公平にすることも必要となります。

■「電力会社」には新・旧の2種類がある

実は電力会社には電力の自由化以前から存在する「旧一般電気事業者」と、自由化によって誕生した「新電力会社」の2種類があります。

一般的に電力会社といえば発電設備を所有し自ら発電を行っている企業というイメージがあるかと思いますが、そのイメージがそのまま当てはまるのが旧一般電気事業者です。例としては東京電力・関西電力・中部電力など、皆さんも名前を聞いたことがあるはずの大手の電力会社がここに含まれます。 これらの大手の電力会社は、電力の自由化以前は地域独占の形で電力の小売事業を行っていました。現在では消費者への小売事業に加えて、 電力の卸売業も営んでいます。

一方、新電力会社は必ずしも発電設備を持っているわけではありません。発電設備を持たない新電力会社は他社から電力を購入し、それを様々な料金プランで消費者に提供することで事業を営んでいます。新日本エネルギーもその一つで、消費者の皆さんそれぞれの生活スタイルに合わせていただけるよう、地域ごとに料金プランのバリエーションをご用意しています。

料金プラン

このように電力の自由化後は新旧多数の電力事業者が存在し、それぞれが互いに差別化を図ることにより、消費者は多彩な料金プランから選べるようになりました。電力自由化や電力事業者について、より詳しく知りたい方は以下のコラムもご覧ください。

■「容量市場」・「容量拠出金」の仕組みとは

ところで、もしも発電設備の維持や更新にかかるコストは設備の所有者が全て負担すべき、ということになれば設備を所有する事業者だけが重い負担を抱えることになり、自由化された電力市場で不利になってしまいます。

そこで生まれたのが、「容量市場」と呼ばれるオークション市場において将来的な電気供給能力(=容量)を売買することによって負担を公平化する、という考え方です。自ら発電設備を持たない新電力会社は「容量拠出金」を支払うことで電気供給能力を確保でき、将来にわたって電力の供給を受けることができます。反対に発電設備を持つ電力会社は電気の供給能力を売ることで、発電設備の維持や更新に必要なお金を確保することができます。

この「容量市場」・「容量拠出金」の仕組みは2024年度の需要期間を対象として初めて導入され、以後の年度についても継続的に実施されています。

■消費者も「容量市場」と関わりがある

発電設備を持たない電力会社が支払った容量拠出金は、最終的に各小売電気事業者の判断のもと、 電気料金に反映されることになります。このため消費者の立場からすると、容量拠出金は電気料金上昇の一要因と見ることもできます。

では、消費者にとって容量市場や容量拠出金は、デメリットとなる制度なのでしょうか? ここまで読んでいただいた読者の方々には、すでにそうでないことをご理解いただけているものと思います。前述のとおり、容量市場での取引を通じて得られたお金が発電設備のメンテナンスや新設に使われることで、将来も安定して電気を使うことができるため、社会全体にとって大きなメリットということができるでしょう。

発電設備

■おわりに

最初にお伝えしたように、電力の自由化によって消費者は様々な料金プランの中から選べるようになりました。一方で、「安さ」だけを追求した低価格競争が激化すれば将来の電力供給に不安が生じる恐れがあります。そこでそういった事態を予め防ぐために導入されているのが、容量市場や容量拠出金の仕組みです。

これらの仕組みは短期的には電気料金の上昇につながる可能性はあるものの、中長期的には電気の安定供給と電気料金の安定化に貢献するものといえるでしょう。
ライフハックライター 柴山 賢二(中小企業診断士)